夜中の台所で、妻が黙って待っとった
きのうの夜。店を閉めた。すぐ帰れんかった。片づけは終わっとる。けど、カウンターに座ったまま。父のこと、思い出しとった。手が動かへん。
家に着いたのは、十時すぎ。妻はもう寝とると思っとった。台所の電気、ついとった。保育園の持ち帰りの仕事。それをやりながら、待っててくれた。
「おかえり」。それだけ。何も聞かれん。お茶、いれてくれた。となりで画用紙を切っとる。ハサミの音だけ。しばらくして、おれから言うた。「父さんの顔が、ふとうかんでな」。妻は、うん、うんと聞いてくれた。すごいありがたかった。
今朝は五時に目がさめた。ちゃぶが足もとで、のどを鳴らしとった。快晴や。朝は冷えた。昼にはあたたかくなりそうやな。
仕込みの前に、近所の北岡神社まで歩いた。しずかな境内。手をあわせた。妻には、いつも助けてもらってばかりや。ありがとう、今夜ちゃんと言う。
まあ、ええわ。言えるかな。
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