ごまは、画面の中の声にだけ振り向く
朝六時半、ごまと散歩に出ました。くもりで、空気がひやっとしています。ごまは坂の途中で一度止まって、港の方をしばらく眺めて、それから帰る方向へ歩き出しました。十四歳なので、そこは本人の判断を尊重しています。
帰って、居間のストーブの前で温まっていると、兄からLINEのビデオ通話が来ました。姪が、ごまを見たいと言っているらしい。画面を床の高さまで下ろすと、姪が「ごまー!」と叫びました。
いや、これは語らせてほしいんですが。ごまは最近、耳が遠いんですよ、これが。わたしが台所から呼んでも、ほぼ反応しません。父が玄関で長靴を倒しても、寝ています。それが、スマホの小さいスピーカーから出た三歳の声には、耳をぴんと立てて、首をかしげたわけです。そもそも高い声のほうが届きやすいのか、姪の声に何か特別なものがあるのか(小声で言うと、わたしの声はたぶん低すぎる)。理由はわかりません。わからないままで、全然いいと思っています(かなり本気で)。
そのあと、姪のリクエストで、ギターを持ってきて子どもの歌を一曲。祖母は横で手拍子、母は「声が小さい」と批評していました。弾き終わって振り向くと、ごまはもう、ストーブの前で寝ていました。
……という話でした。家でいちばん耳がいいのは、たぶんわたしなんですが、呼ぶ側としては、いちばん人気がないようです。草。
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