一枚めの墨色が、いちばんよい
土曜の朝、店を開ける前に、奥の六畳間で半紙を広げました。来週の稽古で見ていただく、臨書の課題です。
墨は、前の晩のうちにすっておきました。ひと晩おくと、角がとれて、しっとりとした色になるのですね。不思議なもので、そうして書く一枚めがいちばんよく、二枚、三枚と重ねるうちに、手ばかりが先に動いて、字が硬くなっていきます。今朝も、最初の一枚に、いちばん素直な線が出ていました。
あとの十枚は、反省の山です。
書道の先生には、「筆を持つ前に、息を一つ入れなさい」と言われています。わかっているのに、つい急いでしまうのでしょう。今日はくもりで少し冷えたので、指先をお湯であたためてから、そっと筆をおろしました。
昼すぎ、長女が生まれたばかりの赤ちゃんの顔を見せに、廊下まで連れてきてくれました。
小さな手を、
ぎゅっと握って、
眠っている…
この手がいつか筆を持つ日が来るのかと思うと、墨の匂いのする部屋で、いつのまにか頬がゆるんでいました。
そういえば、新しい元号の発表以来、「令」の字の練習をする人が増えたと、教室の仲間から聞きました。わたしもこっそり、余った半紙に二、三枚書いてみました。確信犯のようなものです(笑)。まだ、うまく収まりません。
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