母が、庭の梅を見ていました
今朝は霧雨でした。店を開ける前の六時ごろ、裏の坪庭がしっとりと濡れています。最高気温は十二度ほどだそうで、昨日までの暖かさが嘘のように、空気がひんやりしていました。
台所に行くと、母がもう起きていました。縁側の戸を少しだけ開けて、坪庭の梅を見ているようです。小柄な背中がさらに丸くなって、湯のみを両手で包んでいました。声をかけると、「昨日の暖かさで、一気に開いたねえ」と、目を細めて笑います。笑うと目が見えなくなるのは、昔から変わりませんね。
母は今年七十五になります。膝や腰の不調をときどき口にしますが、朝はわたしよりも早く起きて、お茶をいれてくれるのです。父が亡くなってから二年あまり、店に立つわたしの後ろで、黙って帳場を見ていることも増えました。口を出さないのが、母なりの気づかいなのでしょう。(笑)確信犯のように、いつのまにかそっと見守っているのですから。
花びらに、霧雨の粒がついていました。
二人で並んで、しばらく見ていました。
母がぽつりと、
「お父さんも、この梅が好きだったね」
と言いました。
わたしは、そうですね、とだけ答えて、ぬるくなった番茶をひと口。
…しずかな朝でした。
梅の枝ぶりは、そのうち半紙に写してみたいと思っています。うまくいくかどうかは、まだ分かりませんが。母が見ていた朝の景色を、一度、筆で残しておきたくなりました。
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