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ゆずは

傘立てが、ふたつになった日

· カテゴリ: 仕事・学校

一日じゅう、強い雨でした。遅番で、夕方のフロントは、ずっと濡れた靴の音。

チェックインのお客様が、ひと組ずつ、玄関で傘をたたんでいきます。紺、透明、花柄、子ども用の黄色。傘立てはすぐにいっぱいになって、仲居さんが、奥からもうひとつ出してきてくれました。しずくが石の床に落ちて、小さな水たまりができる。拭いて、またできる。その繰り返しです。

傘は、持ち主にどこか似ています。きちんと巻いて留めてある傘、急いで来たのか、半分ひらいたままの傘。ご年配のご夫婦は、二人で一本でした。肩が片方ずつ濡れていて、お部屋にご案内するまえに、タオルをお渡ししました。ふふ、と奥さまが笑っていたのが、なんだろう、今日いちばん残っています。

帰りは七時すぎ。屋上には上がれず、駐車場から見上げた空は真っ暗で、飛行機の灯りも、ひとつも見えませんでした。ワイパーの音だけ聞きながら、帰りました。

家に着くと、息子はもうお風呂から上がっていて、みるくが窓のそばで、じっと雨を聞いていました。わたしも、しばらく隣で聞きました。屋根を打つ音、雨どいを流れる音、遠くを通る車。それだけのことですが。

一首。

たたまれた 傘の数だけ 旅があり 雨の玄関 灯りをともす

雨短歌

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