ムギと八幡さままで
夕方、ムギの散歩に行った。くもりで風はほとんどなく、七月にしては涼しかったので、フリースを着ていこうか迷って、結局やめた。
コースはいつもの、八幡さままで行って帰ってくる道で、往復で三十分ほどである。ムギは一歳になったばかりでまだ引っぱるから、リードを短く持って歩いた。足先の白いところが、砂利道で少し汚れてた。鳥居の前で折り返すのが決まりになっていて、ムギもそれをわかっているようだ。そこで一度すわって、わたしの顔を見上げる。
境内の木の下はうす暗く、蝉はまだ鳴いていなかった。そのかわり、どこかでひぐらしが一匹だけ、試すように鳴いてた。ていうか、まだ早いかな、と思った。
家に帰ると、母が縁側で待っていて、ぬれ雑巾でムギの足をふいてから水をやった。父は居間でテレビを見ていたが、ムギがその足もとにごろんと寝ると、黙って少しだけ足をずらしていた。
まあ、こういう夕方がいちばんいい。
夕暮れの犬の影ながし蝉を待つ
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