父の運転で、母を迎えに行った夜
今日は、朝から空がよく晴れて、日が差す時間が長い一日でした。このところ霧雨が続いていたので、洗濯物を干した祖母が、うれしそうに空を見上げていました。
夕方、部活が終わって帰ると、父が玄関で車の鍵を持っていました。母の帰りが遅くなるそうで、迎えに行くところだったのです。ふだん無口な父が、「行くか」と一言だけ言うので、そのまま助手席に乗りました。
道すがら、父は窓の外の稲を見ては、「今年は穂が重そうだな」と、ひとりごとのように言っていました。農機具の営業をしているので、田んぼの様子が、どうしても気になるようです。ニュースでは、関東や東北の大雨の被害が流れていて、父は「うちのほうは、降らなくてよかった」と、ぽつりと言いました。畑を見ている人の言い方だな、と思いました。
病院の前で母を拾うと、車の中が一気ににぎやかになりました。母が、窓口であったことを、次々に話しはじめたのです。父は「うん」「そうか」としか言わないのですが、ミラーの中の目が細くなっていて、聞いているのがわかりました。
家に着くころには、空に薄く、飛行機雲が一本残っていました。カメラを持って来なかったことを、少し後悔しました。明日は鞄に入れておこうと思います。
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