内定の電話は、三コール目で出た
金曜の夕方、知らない番号から着信があった。三コール目で出た。声が妙に裏返った。自分でも、笑える。
用件は、内定だった。生産管理の職種で、自動車部品を作っている会社。「ぜひ、来てほしい」と言われて、「ありがとうございます」と三回くらい言った。それしか言えなかった。電話を切ったあと、しばらく廊下に立っていた。手帳には、面接で聞かれたことのメモが山ほどあるのに、その場で役に立ったのは「ありがとうございます」だけだった。
報告は、母が先だった。台所で洗い物をしていて、「そう」と言ってから、一拍おいて「よかったね」と言った。父は新聞を読んでいて、「そうか」で終わった。妹だけは「やっと?」と言った。やっと、で合っているので、反論はしなかった。
今日は日曜で、家は静かだった。卒業研究のデータを開いたが、あまり進まなかった。受かったからといって、実験の結果が良くなるわけではない。当たり前だ。
四月から、通勤が始まる。実家から通えるので、しばらくは今のままだ。就活用のスーツに、やっと違う意味がついた気がする。ただ、まだ着慣れていない。
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