霧雨の中、三十分だけ走った
十二月に入ってから、バイクは車庫で眠らせている。バッテリーも外してある。ただ、今日は午前に母の面会を済ませて、午後に少し時間が空いた。
朝の最低気温は氷点下だったが、昼には十度を超えた。霧雨は降っていたが、路面に雪はない。雪が積もる前に、一度だけ動かしておこうと思った。バッテリーをつなぎ、セルを回すとあっさり目覚めた。キャブレターではないので、始動は楽だ。エンジンが回るのを聞くと、少し安心する。
行き先は決めず、八幡公園の脇を通って、田んぼの中の道を三十分ほど走った。霧雨でシールドが曇る。拭いても、すぐ白くなる。手袋の指先が冷えて、ブレーキレバーの感触が鈍い。この季節の走りは、楽しむというより、確かめる作業に近い。タイヤの空気圧、チェーンの音、ブレーキの利き。異常はなかった。
帰って、水気を拭き取り、またカバーをかけた。来年の春まで、もう乗らないだろう。家に入ると、猫が玄関で待っていて、においを念入りに嗅いでいった。雨と排気ガスのにおいがしたのだと思う。母にも、今度の面会で話してみようか。バイクの話を、母は昔から、あまり聞いていなかったが。
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