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こてじい

親方に叱られた、鏝板の置き場所

· カテゴリ: 仕事・学校

朝から小雨で、庭に出られん。縁側で茶を飲みながら、むかしの親方のことを思い出した。

弟子に入ったのは十五の春たい。最初の一年は壁なんぞ塗らせてもらえんで、砂をふるう。水を汲む。藁をきざむ。鏝は持たせてもらえんかったが、それでも鏝板だけは毎日さわっとった。

ある日わしは、土が落ちんようにと思うて、鏝板を足もとの低い所に置いた。そしたら親方が飛んできて、道具を地べたに置く奴があるか、と一言。怒鳴りはせん。ただ目が怖かった。道具は手の先ばい、手の先をなおざりにする者にまっすぐな壁は塗れん、そう言われた。

それがね、あとになって分かったことがあって、鏝板を腰の高さに置いておくと、土をすくう角度も壁に運ぶ道すじも毎日おなじになって、塗る手の動きが自然とそろうごたる。親方がそこまで考えて叱ったかどうかは知らん。ただ手がおぼえとったんだろうと思う。いまのわしにも、あの置き場所が体に残っとって、もう壁は塗らんのに、台所で盆を置くとき、つい腰の高さに置いてしまう。妻に笑われる(笑)。

親方が亡くなって、もう十九年になる。叱られた日のことは、よう覚えとる。今日は雨やけん、一日おとなしくしとく。腰もあまり調子がよくないもんね。まあ、よかたい。

左官雑記

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