四歳の設計図
夕方、保育所から帰ってくると、長女が広告の裏にせっせと何かを描いていました。見ると四角い箱がいくつも並んでいて、「これはおうち。これはおふろ。これはおかあさんのおしごとべや」と順に説明してくれます。わたしの仕事部屋が家の中に存在していることに驚きつつ、ひとまず、将来の計画ということにしておきました。
気になったのは線の引き方です。定規がないので本の背を当てて、息を詰めるようにゆっくり引いています。途中で線がずれても消しゴムは使わず、その上からもう一度なぞって直してしまう。現場で言えば墨出しのやり直しにあたる作業ですが、四歳にして手戻りの少ない工程を選んでいるわけで、これは血筋でしょうか。
玄関の位置を訊くと、少し考えてから「ここ。だって、くつをぬぐから」と指さしました。なるほど、理屈は通っています。ただ、玄関から入ってすぐ目の前がお風呂という配置は、動線としては、帰宅した瞬間に入浴を迫られる間取りです。そこは指摘せず、そっと見守ることにしました。
寝る前に、その広告は冷蔵庫の扉に貼られました。先日、近所の月見通り公園で拾ってきた枯れ葉も、なぜか「しょくたく」の位置に鎮座しています。設計者の意向なので施工側は口を挟めませんが、完成検査がいつになるのかだけは、確認しておきたいところです。おあとがよろしいようで。
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