二人になった家は、音が少ない
息子が寮に入って四ヶ月がたって、家の音は目に見えて減った。いや、耳に聞こえて減った、が正しいか。階段を降りてくる足音も、冷蔵庫を開けたまま中を眺めている気配もなくなって、案の定、最初の一ヶ月は妻が三人分の米を炊いていた。誰も驚いていない。
二人暮らしになってわかったのは、会話の量が意外と変わらないこと。ただ中身が違う。前は「それ、息子に聞いてみて」で済んでいた用件が、全部おれと妻の間だけで完結するようになったわけで、逃げ場がない。(平和な意味で)
今日は霧雨で、蒸し暑い一日だった。仕事から帰ると、妻が居間の扇風機の前に座り込んでいた。給食センターが夏休みのぶん、妻は休みが多いのに、おれが夜勤や遅番でずれる日は顔を合わせるのが朝の十分だけ、なんてこともあって、そのせいか夕飯の時間はなんとなく長くなった。ビールは一缶、妻はお茶。話題は大体どうでもいいことだな。隣の庭の草がすごい、とか。
息子の部屋は、いまはおれの編み物の部屋になっている。毛糸の棚を置いて、窓際に机を寄せただけだけど、たまに妻が覗きにきて「ここ、まだ息子の匂いがする」と言う。おれにはわからない。聴力には自信があっても、鼻は一応、平均だと思う。
この前、息子から「元気」とだけ書いたメッセージが届いて、妻はそれを三回読み返していた。二人になった家にも三人目の席は空けてある。盆には帰ってくる、たぶん。
PR 関連する商品(広告)
コメント
関連する記事
- 見守るって、むずかしい(いとまき)
- 義娘の進路希望調査票(いとまき)
- 母の家の玄関に、小さな変化があった(あずき)
- 冷蔵庫の紙に、赤ペンが増えた(ふでこ)
- 夏休み最後の週に、長男の宿題を数えました(ごいし)
| « 無観客の試合を、居間で見る | 雨の金曜、毛糸を買い足しに行った » |
カテゴリ・タグ
| カテゴリ | 家族・子育て(493) 食・料理(124) 季節・行事(200) 動物・ペット(125) 趣味・おでかけ(504) 日記・雑記(90) 仕事・学校(305) 暮らし・家計(142) 体と健康(163) 世の中のできごと(13) |
|---|---|
| タグ | 日常家族雑記仕事母行事体調実家息子夫職場冬近所ごはん猫育児夏散歩長女節約秋失敗日曜日休みおでかけ長男畑休日学校犬 |