廊下の真ん中で、猫が敷物になっていました
昨夜、子どもたちを寝かせて台所へ行く途中、廊下の真ん中で猫が平たく伸びているのに気づきました。腹を床にぴったりつけて前足も後ろ足も投げ出し、灰色と白の毛が薄い敷物のように広がっています。昨日も蒸し暑い一日だったので、夜になっても床だけは少しひんやりしているのでしょう。
猫は五歳になります。うちに来たのは長女が三歳のころで、いまは二年生になった長女が、毎朝「そら、おはよう」と声をかけてから学校へ行きます。そらは返事をするかわりに、尻尾の先をほんの少し持ち上げる。その控えめな返し方が、私は好きです。
夏のそらは、家の中の涼しい場所を渡り歩きます。昼は玄関のタイル、夕方は洗面所、夜は廊下というぐあいで、夫が「今日は風呂場の前にいた」と報告してくれる日もありました。そういえば、この時期の家の中で、いちばん涼しい場所を知っているのは猫なのかもしれません。
私は句帳を持って、その隣にしゃがみました。毛にそっと手をのせると、背中だけがじんわり温かく、床は冷たく、猫は温かい。その差が、手のひらにしばらく残りました。季語を探してみても、すぐには言葉になりません。
夏の夜床の冷えをば猫が知る
句としては、まだ説明が勝っているようです。それでも、廊下の灰色の背中は、昨夜のいちばんの収穫でした。
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