全十二巻、ひと晩で抜かれた
朝、本棚の一段が、ぽっかり空いとりました。
犯人は長女。わたしが高校のころに集めた、全十二巻の少女マンガを、夜のうちにこっそり部屋へ持っていっとったんです。起こさずにおいたら、お昼前に目を真っ赤にして降りてきて、「八巻のあれ、ずるい」とだけ言いよる。あー、それね。わかる。わかりすぎる。
ちょっと語らせて。あの八巻は、主人公がずっと言えんかった一言を、放課後の渡り廊下でやっと言うところなんよね。セリフはほんの小さい字なのに、そのコマだけ背景をぜんぶ白く抜いてあって、当時のわたしは「白って、描かんことで描けるんや」と、しばらく固まったんです(美大に行った理由の何割かは、たぶんこのコマ)。長女も美術部やけん、同じところで止まったらしくて、「あそこ、なんで白いん」って聞いてくる。トーンを貼らん勇気の話から、余白の話、作者さんのあとがきの話まで、説明しよったら止まらんようになって、気づいたら台所でやかんが鳴りっぱなしでした(語りすぎました)。
紙は少し焼けて、カバーの角も丸うなっとるんですけど、二十年以上たって、娘が同じページで泣くとは。尊い…。夫は横で「そんなに泣く話なん」と首をかしげて、長男はムギとソファで寝とりました。
外はくもりで、昼になってもひんやり。夜、長女は9巻から先へ。わたしは仕事部屋で、あしたが締切のバナーを少しだけ。続きを読みよる部屋の灯りが、廊下にもれとるのが、なんかええんですよね。
とりあえず、そんな一日でした。
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